少額訴訟への道のり

第09章:意外な成り行き

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<平成14年10月21日(月曜日)>
裁判を翌日に控えていたその日、私と親父は小雨が降る屋外でビデオの撮影をしていたのですが、 A社のA氏から唐突に電話が入りました。

何かと思ったところ、A氏いわく
『B氏とC氏の両方に話を付けたので、それぞれから集金をして月末に私が責任を持って入金するから訴状を取り下げて欲しい。』
と、言うのです。
裁判の前日になっての『虫のいい話に』戸惑いましたが、私としてはどんな形であれ全額回収さえできれば何の 不満はありません。
そこで、『入金を確認してから』という条件付で訴状取り下げを受け入れる事にしました。
ただし、前日にまで迫った裁判を今更ストップするわけにも行かないので、この事を前提に裁判は決行する旨を 伝え、A氏もそれを了承しました。

かくして、円満解決へ向けて裁判を迎える事となりました。


<平成14年10月22日(火曜日)>
裁判当日も昨日の撮影の続きがあったのですが、残りの作業を親父に任せて現場を後にしました。
工場のある大宮から霞ヶ関への移動は接続が良かった為か予想以上にスムーズで、仕方なく裁判所1階のロビーで 時間を潰す事となりました。

頃合を見計らって裁判の行われる3階へ移動しましたのですが、法廷のあるフロアは木をあしらった暖かく落ち着いた雰囲気で、事務一辺倒の裁判所とは違った趣がありました。

部屋番号を頼りに奥に進んでゆくと、入り口に事件番号と当事者の会社名が表札のように掛かっていたので、恐る恐る 法廷内へ入りました。
しかし、中にはまだ誰も来ておらず、『出廷カード』なるものに自分の名前を書いてから、傍聴席に座ってしばらく 待つ事にしました。

[図:出廷カード]
うろ覚えですが、このようなA4の紙で、自分の名前だけを書けばよいようになっていたと思います。

私がボーっとしていたところ、開始時刻の少し前に初老の男性が法廷に入ってきて、『弁護士のM』と名乗りました。
M氏なる弁護士が来る事は昨日のA氏からの電話で聞いていたのですが、C社の代理出廷ではなく成り行きを見守る為の オブザーバーとして来ただけだというのです。
しかも、裁判に至る事情も殆んど知らされていないというので呆れてしまいました。

しかし、物は考えようで、C社側からの出廷者がいないとなれば原告の無条件勝訴の可能性が出てきます。
所定の時刻が来て裁判官と書記官(司法委員?)が法廷の奥のドアから入ってきて、私とM氏は円卓に座ったのですが、 案の定C社の人間は誰も来ませんでした。

それでも、裁判は始まったのです。

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