2cvのサボり癖について考える

イグニッションキーを回してエンジンを始動し、半日走って、目的地を目指し、用事を済ませて家に帰る

自動車を乗り回す上で一見『当たり前』と思えるルーチンワークですが、我が家のポンコツ車はこの『当たり前』 に動いてくれない事があります。

例えば
● 信号が青に変わったので走り出そうとしたら突然エンストした
● 渋滞にはまったら、アイドリングが不安定になってエンストした
● コンビニで買い物を済ませて帰ろうとしたが、なかなかエンジンが掛からない
・・・・など、それまで順調に動いていたのに急に動かなくなるので、私は 『サボり癖』 と言っています。

エンジンが止まったり、不調になるという事は
1. 吸気
2. 圧縮
3. 燃焼
4. 排気
と、いう燃焼サイクルのどこかに不具合があるはずです。
しかし、エンジンが焼きついたりするなどの深刻なトラブルでなくとも
1. 空気
2. 電気
3. 燃料
3点の何れかがのバランスが狂っただけで案外簡単に止まってしまいます。
実際にはトラブルに陥るとその煽りで別の不具合を誘発しますので『原因の切り分け』が難しくなりますが、 私の体験も踏まえて『傾向と対策』について考えてみたいと思います。


トラブルの原因あれこれ

・ スロージェットのトラブル
・ イグニッションコイルの不良
・ 燃料ポンプが原因の不具合
・ パーコレーション


スロージェットのトラブル

スロージェット
スロージェットを車前方から見た図

実は長らく放置していたこのページを書く切欠はスロージェットが元のトラブルでした。
キャブレターは元々繊細な装置なので様々なトラブルの元凶(?)となりえますが、私は大小2つの トラブルを経験しました。

まずはスロージェットの脱落です。
スロージェットはキャブレターのジェット類のうち、『低回転域の燃料の流量を制限する物』のようですが、 知らない間にこれを脱落させてしまい酷い目にあいました。
この件は
『悪夢の1ヶ月』と題して長編コンテンツにまとめてあります。

主な症状として燃料ポンプ、電気系統に問題が無いのに
・ エンジンがなかなか掛からない
・ エンジンが掛かってもアイドリングもままなず、エンストしてしまう
などが上げられます。
スロージェットはねじ込み式になっているので軽いトルクで締めても通常は抜ける事は無いのですが、 オーバーホールをするなどの際に最後の締め込みを忘れたりすると振動で緩んだりします。
同じ理屈でメインジェットが落ちる事もあるのですが、スロージェットが走行中に落ちると普通は 見つける事が出来ず、アウトでしょう。
(エンジンの下部に引っかかっていた・・・なんて話も聞いたことがありますが)

この場合の対処療法は存在せず、同じジェットを入手するしかありません。
ところが、国の内外を問わずこのジェットだけを探すのは案外面倒で、下手をするとキャブレターの交換などと言う 非現実的な話になったりします。
その為、2cvのキャブレターオーバーホールキットのような形で入手するのが早いようです。

続いて つい先日スロージェットがスラッジでつまり気味になった が為にアイドリングが出来なくなり、 頻繁にエンストして立ち往生する羽目に合いました。

キャブレターがかなり汚れていたのでキャブレタークリーナーで清掃したのですが、その際に剥がれた スラッジが回りまわってスロージェットに付着してしまったのです。

まあ、所詮は汚れなので外してキャブクリーナーやパーツクリーナーで洗浄する事で全快してくれました。

どちらのトラブルの原因もスロージェットでしたが、別名アイドルジェットと言うくらいで、 アイドリングのトラブルの際には疑ってみる価値はありそうです。


イグニッションコイルの不良

これは『給料の3か月分号』の初期レストアの最中に経験したトラブルです。

当時はあらゆる意味で本調子でなかったので、信号待ちの間にエンストする事も珍しくありませんでした。
その為、信号待ちの間アクセルを空ぶかしをするなどで対処していました。
ところがシグナルグランプリの要領で空ぶかしをしているのにも拘らず、スタートの瞬間にエンストするという 体たらくを演じていました。
信号待ちの先頭でこの状態になると、否応なくクラクションの洗礼を受けますので大変辛い思いをしたものです。

顕著なのは正常な状態から突然エンストするという点です。
一応はアイドリングしていたのですからエンストの直前までは燃料、空気、電気のいずれも問題なく供給されて いたと考えられます。
それが緩やかにではなく、一瞬で止まってしまうのですから決定的に何かがおかしいと思い、(当時はまだ存在した) 西武自動車で相談したところ『イグニッションコイルの不良では?』と、 いう回答がありました。
そこで大枚払って純正品を取り寄せて交換したところ、嘘のようにエンストは起こらなくなりました。
つまり、イグニッションコイルの不良によりスパークプラグへの通電が止まった為に起こったエンストだったわけです。

イグニッションコイルの寿命がどれくらいかは分かりませんが、
● 突然のエンストが増えた
● イグニッションコイルに封入されているオイル(?)が多量に滲んでいる
などの場合いは疑ってみる必要があるかもしれません。
場合によっては『イグニッションコイルへの配線が抜けかかっていた』 なんて事で済むかもしれません。

ちなみに2cvのイグニッションコイルを正規ルートで購入すると1万円以上しますので、
FPSさん等の海外通販を利用した方が安価に入手が出来ます。
また、人によっては2気筒エンジンの国産車用を流用しているようです。


燃料ポンプによる不具合

ノーマル状態の2cvには機械式の燃料ポンプが装備されています。
これはエンジンの回転によって駆動する霧吹きのような簡単な構造をしている為、信頼性は意外に高いと思っています。
しかし、全く壊れないわけでもないので、故障すると当然燃料の供給が止まりエンジンは掛かりません。

また、機械式燃料ポンプは低速回転での供給能力不足から故障を起こさないまでも、トラブルを引き起こすことがあります。
パーコレーションも顕著な例ですが、ガス欠の後エンジンが掛からないなんていう事も案外多いと思います。

私の場合、燃料計の修理を放置していたのが遠因となり走行中にガス欠したことがあります。
その際、携行燃料タンクで給油を行ったのですが、残念ながらエンジンは掛かってくれませんでした。
パーコレーションと同じ理屈ですが、燃料パイプ内の燃料まで使ってしまったが為に燃料パイプ内に空気が入ってしまったのが原因です。

現代の燃料ポンプは供給能力が高いのでこんなトホホな状態になる事は殆ど無いのですが、万が一なってしまった 場合の対処法は呼び水ならぬ『呼び燃料』が一般的だと思います。

具体的にはエアクリーナを外してキャブレターを露にし、
・ 燃料パイプに(KUREの)キャブレタークリーナーを吹き入れる
人が多いようですが、
・ 少量の燃料をキャブレターに注入する
という方法を使う人もいます。
ちなみに前述のスタックの際にはサルベージに来たBXに牽引してもらい、押しがけの要領でポンプを回して エンジンを掛けました。
まあ、ガス欠で止まる前の給油を心掛けるのも手ですが、思い切って国産の 電磁ポンプに交換 するも効果的です。
機械式ポンプの能力不足を補えるの他、燃費の向上などの副次的効用も見込めます。


パーコレーション

パーコレーションは簡単にいうと熱により燃料パイプの中に気泡が生じてしまい、燃料の供給が上手くいかなくなる 現象です。
2cvは空冷エンジンなので水冷エンジンよりも排熱性が悪く、冬でも渋滞に捕まったりすると パーコレーションの恐怖(?)にさらされます。
パーコレーションが始まると燃料が沸き立ちアイドリングが不安定になるのでエンジンを吹かし気味にして エンストしないようにするのが対処療法です。
しかし、残念ながらパーコレーションに陥った場合いには走行するなり、逆にエンジンを止めるなりして、 冷ますしか本質的な解決方法はありません。
燃料ポンプを
電磁ポンプに交換すると供給能力が高くなってパーコレーションにも 多少強くなるのですが対処療法の一つにしか過ぎません。


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