三菱のi(アイ)の事を知ったのはかなり最近の事だ。
一番早かったとしても自動車番組の東京モーターショー特集程度なので1年弱くらいしか経っていないし、下手をすると発売後の新聞広告やCMで知った可能性も高い。
そんな訳で、細かい能書きを知ったのは極最近だと思う。
iの事を本格的に知ったのはTV番組『クルマのツボ』(TVK)だろう。
しかし、放送時にサラッと見ただけで特に印象には残らなかった。
否、ミッドエンジン+リアドライブという特異な成り立ちだけ見てもビートやコペン並みの個性的でプレミアムな軽自動車と十分認識はした。
しかし、そうは言っても異例の高価格と言う事も手伝って『2cvの買い替え候補』の琴線に触れなかったのだ。
ところが、前の週にプジョー1007の試乗をしてチョッピリ『試乗趣味』が再発した。
1007は両側スライドドアの個性的で面白い車では有るが、『普遍性』が若干弱いし、金額的も一寸高すぎる。
逆にダイハツのエッセはどこも冒険はしていない代わりに極めて普遍的な車作りをしている。
加えて、私の中では単なる安車ではない突出したキャラクター性を感じていたのだ。
こうして不意に軽自動車を比較対照に持ち出してしまったところ、『i』が鎌首をもたげてきた。
如何にiが軽自動車としては高価だといっても2リッタークラスの外国車の比ではない。
そう考えたら急に身近な存在に感じられたので買い物のついでに実物を見に行く事にした。
プジョー1007に試乗したのは平成18年5月27日土曜日のことだ。
『クルマのツボ』で1007を取り上げたのが4月末だし、『久米宏のCAR TOUCH!!』を見たのはそのずっと前なので思い立ってから軽く1ヶ月以上は掛かっている計算だ。
何故そこまで時間が掛かったというと、仕事が忙しかったのが理由の筆頭だが、ゴールデンウィーク中は最寄のディーラーが休みだった事に加え、フクラハギの肉離れで安静にしてた事もある・・・
小雨の降る中、ポンコツ2cvをディーラーの駐車場に停めると、そこには試乗用の1007が
置いてあった。
駐車場には営業がつめており、直ぐに実車に乗り込むことが出来た。
■ ファースト・インプレッション ■
始めて間近に見る1007は非常にボリューム感のある車だった。
写真やディーラーの前を通ったときに見える1007はシトロエンC2に近いものなので、あくまでも頭の中にあるイメージとのギャップがあったのだ。
まあ、あくまでもボリューム感があるといってもC3と同クラスの車なので絶対的ではない。
さて、例のスライドドアをリモコンで開けてもらいシートに座ってみた。
・・・感嘆するしかなかった
一見するとスポーツカーのバケットシートだが、座面などに低反発素材を使っているのかタッチが柔らかいのに確りと受け止めてくれると言うか、フランス車の真骨頂を感じた。
やっぱりイタフラのシートは恐ろしい・・・
この点は後部座席も同じだった。
ドアの枚数を考えるとふとC2と比べてみたくなるが、あちらは簡便な構造で座面のクッションも非常に薄くあくまでもプラス2程度でしかないイメージがある。
それと比べて1007のリヤシートは長距離乗っていても疲れない作りに思えた。
例のカメレオコンセプトも気に入った。
基本的に車はアクセサリーなどは付けずに素で乗る主義なので、気分でパーツを入れ替える事は考えていない。
しかし、『汚れたら洗濯出来る』とか『タバコで焦げても交換できる』という実用性が面白い。
シートに感心していたら、営業さんから言われて多少気になる点が見つかった。
巨大なフロントガラスはかなり寝ているものの、ドライバーシートから相当離れた場所にあるため圧迫感は無い。
しかし、だだっ広いダッシュボードの更に奥に窓の下枠があり、ボンネットそこから『カックン』と下に向かっているため、車体が何処まであるかが良くわからないのだ。
まあ、私はそれなりの運転経験があるのでボディーの形状を想像する事が出来るが奥方のようなペーパードライバーは怖いと感じるレベルである。
■ さて試乗 ■
どうのこうの言っても車は動かしてみなければ本質は分からない。
早速試乗をさせてもらったのだが、私が地元の人間であることを悟った営業さんにより奥方と二人での自由試乗させてもらった。
(営業で近所を走っているときに駐車してある我が家のポンコツ2cvをよく見ていたらしい)
簡単に2トロニックの解説をしてもらってから路上に出たが、アクセルペダルの最初の一踏みで感じたのは『なかなか前に進まない感覚』だった。
生まれて始めて乗る素性の分からない車に乗り、いきなり床までベタ踏みする馬鹿はいない。
当然様子を見ながら恐る恐るアクセルペダルを踏むのだが、2ペダルMT故にクラッチが繋がるまでのタイムラグがある。
しかもクラッチが繋がってからトルクが立ち上がるのにも当然タイムラグがあるし、どのくらい踏めばどのくらいのトルクが出るかは経験しないと分からない。
それらが複合して『なかなか前に進まない感覚』に繋がったと思う。
何度か信号で止まり、再発進するたびに試してみたところ、多少強めにアクセルを踏んでも急発進することはなかった。
そんな訳で本質的に慣れるのにはもう少し時間が必要だと思ったものの、発進にだけ多少気を使った感があるが、走り出してしまえば気にならなかった。
乗り心地についてだが、短い試乗では猫足までは感じる事はなかった。
しかし、近年のドイツ車のようになってしまったプジョーの車の中では明らかに柔らかく、しなやかな足回りだった。
少なくとも一昔前のボディーが緩かった時代の乗り心地ではなく、サスペンションがよく動いていたという感覚だ。
他に感じたのは小型車に乗っているとは思えないような感覚だ。
運転席でベルトを締めている限り、いくら手を伸ばしてもフロントガラスを触ることは出来ないくらい目の前の空間が開いている。
それが利いているのか横方向は絶対的に広いはずはないのに車の角々が運転手から離れたところにある感じがするのだ。
大型車に乗っているかの錯覚に陥ったのはそんな理由かもしれない。
■ 2ペダルMTのオートモードは是か非か ■
さて、シトロエンのセンソドライブ、フィアットのデュアロジック、プジョーの2トロニックと、
3種類の2ペダルMTに乗ったことになる。
しかし、どれもオートモードで運転するとシフトアップの際にギクシャク感がある。
普通のMTと同じでシフトアップする時にアクセルをオフにすると相当緩和するのだがマニュアルモードでない限り、それを察知するのは難しい。
まあ、実際に所有して慣れてくれば体が覚えてくるかもしれないが、人間が機械の動きに合わせるだから不思議な感覚だ。
私はこのシステムを
『靴屋をリストラされた小人さんたちがクラッチ操作している』
と肯定的に受け止めているが、何度試乗しても考えながら運転してしまう・・・
素直にマニュアルモードで乗るかアクセル制御までやらない事にはオートモードは日本でトルコンATに置き換わる事は難しいだろう。
■ 試乗を終えて ■
久しぶりに面白い車に乗ったという感覚を得て試乗から戻ってきた。
担当となった営業さんと値段などを含めて雑談をしたがなかなか魅力的な車に思えた。
ほぼ同じ位置づけにあるシトロエンC3やC2が相次いで値上がりして買い替え候補から半歩後退したので、1007はそこへ割り込んできた感じなのだ。
そんな訳で私の中の買い替えランキングは多少なりとも変化があった。
自宅に戻り、試乗の経験を反芻しながら1007を買ったとしたらを思考実験する楽しい時間が続いた。
・・・が、その時間は案外短かった。
現在の2cvの利用状況を考えると1007に乗り換えても何の問題も無いだろう。
両側スライドドアという特記事項のあるし、乗り心地も純然たるフランス車だ。
C3、C2の後に出てきた車なので信頼性も確保されているだろうし、値段も若干安い。
しかし、ロケで使う機材を出し入れすることを考えるとスライドドアはあまりメリットにならない。
カメラのバッテリーなどの小物は問題ないのだが、大物の三脚類やバッテリーライトのカバンを出し入れするには全座席を移動させて必要があるが、真っ直ぐに入れる事は難しい。
恐らく後部座席は畳んでリアハッチから荷物の出し入れする事になるだろう。
それはどんな車を買っても同じ事だが、4ドアハッチバックの車と比べると選択肢が減るのも確かなのだ。
結局、買い替え候補として考えているフィアット・ニューパンダやダイハツ・エッセにも良い点、悪い点もあるが何かしら飛び抜けているところが有る。
1007も含めてどれも個性的な車なので、それらの有る生活は楽しいものになると思う。
しかし、極めて主観的な物だが1007には『飛び抜け感』が若干弱い気がするのだ。
まあ、あくまでも2cvと比較するからだろうが・・・
(2006.06.05)
プジョーが4桁の車名のシリーズを出すらしいと言うのを知ったのは2年近く前だと思う。
それが雑誌だったかWebの情報サイトだったかは記憶がないが、その後1007という名の両側スライドドアの車であると知った。
当時、私の関心はトヨタとPSAが兄弟車を作ったと言う話題のほうに行っていたので
Webで1007のCM?を見てCM作りのセンスの良さに感心したものの「へぇ~そうなんだぁ~」くらいにしか感じなかった。
その後日本に正式リリースされた新聞で読み、近所のディーラーに実車が置かれるようになっても状況は変わらなかった。
度々新型車を出す日本のメーカーと違ってモデルチェンジ以外は滅多に新型車を出さないプジョーの事だから乗ったら乗ったで面白いのは分かっている。
しかし、所詮はシトロエンC3、C2と同じプラットフォームの似たような車なのだから多少味付けが違うくらいで大差がないように思えたからだ。
(いくらドアの作りが違ってでもね)
心情に変化が生まれたのはパソコンTV『Gyao』の『久米宏のCAR TOUCH!!』を見てからだ。
久米さんの『シートの出来がすばらしい!』と言うの一言を聞いてシートマニアとしては気になって仕方がなくなった。
その後、『クルマのツボ』でも1007が取り上げられ、本格的にいても立ってもいられなくなった。
しかし、諸般の事情により実際に試乗へ行けたのは1ヵ月後くらいだった。
(2006.06.05)
私は毎日徒歩で通勤してるが、その途中に結構安い中古車屋さんがある。
前出のBMWのある中古車屋さんだが、店とは言っても駐車場にプレハブとニッケン君トイレが置いてあるような簡素な物だ。
この店の奥にいつの頃からかオペル・ヴィータが置いてあるのだが、値段が安いのでチョッチ気になっている。
■ ヴィータ考察 ■
値段を示すプレートから情報を拾ってゆくと、このヴィータは1996年式という事が分かった。
また、背面のプレートから1.4Lのツイカムエンジンを積んだ車らしい。
内装は全て黒と言うかチャコールグレーというか・・・よく言えば実用主義だが、お洒落とは無縁に思えるものだ。
外装もガンメタ(シルバーメタリック?)だし、バンパーはペイントせず樹脂素材のままである事からも、前のオーナーが質実剛健な使い方を考慮した事が伺いし得る。
さて、オペルのヴィータを10年位前に妹がしきりに欲しがっていた時期があった。
彼女は何事にも熱しやすく冷めやすい性格なのでヴィータの何処が気に入ったのかイマイチ理解できなかったが、『そんな車買っては駄目だ』とは思わなかった。
確かにお洒落とは程遠い車ではあったが、エアバッグやABSなどの安全装備が充実している分、割安感すら感じたくらいだった。
(当時は廉価版として左のMTが用意してあったので、買ったら楽しめたかもしれない・・・)
そんな訳で、2cvをどうしても手放しざるを得なくなり、且つこの店から車を調達しなければならなくなったと仮定するならばヴィータは最有力候補に上がってくる。
値段が安いという事が最大のポイントではあるが、同時に店においてある車で最も小型なので小回りが利きそうだからだ。
しかし、ヴィータには大きなウイークポイントがある。
それはキャラクターの薄さとメーカーの持つ無国籍イメージだ。
ドイツの車と言うとメルツェデス=高級、BMW=スポーティー、VW=質実剛健のようなキーワードが出てくるが、オペルの車にこれらのイメージを見出す事は難しい。
かなり昔にGMの傘下に入った事、コストダウンのために日本車を参考にした事、デザイナーに日本人を採用した事など、諸般の理由により一見してのドイツ車オーラが希薄なのだ。
オペルは元々VWと並ぶドイツの量産車メーカーだったはずだが、多くの日本人に『ドイツの車メーカーを3つ上げよ』と尋ねたらオペルはその中に含まれる事は無いだろう。
私も『5つ上げろ』と言われなければオペルは出てこない。
ドイツで作られているので(?)質実剛健であろうとは想像するのだが、愚直に徹しているわけでもないし、遊び心を見出す事も難しい。
まあ、ロケ車をベンツやBMWなどに変えたらお客さんに『随分と儲かってるんだな』と皮肉の一つも言われそうなのでオペルヴィータのようなマイナーな車を選ぶのは狙い目かもしれない。
・・・が、やっぱりオペルは5番目のドイツメーカーであり、それ以上でも以下でもない。
値段を無視すればダイハツ・エッセの方が私の中では候補の上位にランクしている。
バブル紳士やIT長者でもない限り、車を度々買い換えたり買い増ししたりする事は物理的にも、経済的にも困難な事である。
私がクルマのディーラーに試乗に行くのは、そんな適わぬ夢をほんの束の間現実にするためなのだ。
しかし、試乗というのも実に不思議な物で、五感を研ぎ澄ませて吟味している筈なのに、いざ購入してみると『乗り心地が違って感じる』とか『案外使いにくかった』と言う事も有得る。
その原因が試乗時間が短い事とスチュエーションが限定されるからと分かりきってはいるのだが、自家用車と同等に乗り回すのは上記の通り難しい。
考えうる数少ない機会は『レンタカー』や『知人から預かる』事などがあるが、今回は『2cvの車検の間の代車』という形で訪れた。
■ ファーストインプレッション ■
2cvを車検に出したのは平成18年1月11日の事。
西新井の車検屋さんから代車として借りてきたのが三菱リベロだった。
ランサーベースのワゴンだと思ったが、商用バン扱いなので4ナンバーだ。
ご丁寧にリアウィンドウには車検屋さんの名前まで入っている営業車のような車だが、2cvでなければ仕事にならないと言う事は無いので必要にして十分だ。
車検屋さんに見送られて店を出たが、オートマティック車である事がかえって私を戸惑わせた。
■ 試乗(?)開始 ■
あくまでもリベロは代車だし、普通すぎて私の眼鏡には適わない。
しかし、上記の通り纏まった時間、自分の物ではない車に乗ることが出来る機会は滅多に無い。
そんな訳で自ずとアナライザーモードに突入した。
最初に感じたのはパワステの手応えだ。
製造時期を考えると油圧によるパワステだと思うのだが、中立位置がダルなのだが、右左折をする時にステアリングを切り込めば切り込むほど腕力が必要になる感覚がある。
ここでいう腕力とは『キャスターアクションが強い』だけの話であり、出来の悪い電動パワステのような違和感ではい。
例えるなら柔らかいゴムチューブを捻っている感覚に似ていて、素直とは違った印象なのだ。
これはサスペンションの立て付けや構造から来る物だろうから個性であると考える事にした。
次に感じたのはノイズの篭りだ。
エンジン音は静かで殆んど分からない位なのなのだが、舗装によっては『モアアアァァ・・・・』というタイヤノイズが結構な音圧となって鼓膜を攻撃してくる。
2cvのようにラジオの音が聞こえなくなるような事は無いが、このノイズだけを聞いて長時間運転するのは結構辛そうだ。
さて、この車のATは3速だ。
今、仮に車を買うとすると3速ATは避けたいと思っているのだが、逆に言うと3速ATって物を感じてみたかったので『渡りに船』だった。
・・・で、結論としては『4速が欲しくなるのは間違いない』と言う物だった。
リベロのATを流れの良い環七で詳細に観察したところ、10km/h未満で2速にシフトし、30km/hに上がったあたりで直ぐに3速にシフトしてしまうようだ。
実際問題、50~60km/h位に速度が上がってもエンジン音が煩くて仕方がないと言う事は無い。
しかし、『3速ATしか乗ったことが無い』と言うのならばいざ知らず、シトロエンBXで4速ATを経験済みなので使用上のメリットは感じなかった。
逆説的には使用する巡航速度が『50~60km/h』未満ならば3速ATも良いと思った。
■ 意外なシートの印象 ■
私は動力性能やハンドリング以上にシートの出来が気になって仕方がない性分だ。
この点において代車リベロは商用バンである故に少々不利ではある。
正直言ってトヨタ・ビッツやパッソ以下の『辛うじて座っていられるだけ』ではないかと想像していた。
ところが実際に座って走ってみるとそれが先入観だった事に気付いた。
表皮が商用バンにありがちのビニールではなく布張りな上に、クッションの”あんこ”が適度に柔らかい為、予想に反して乗り心地が良いのだ。
やはり出来の良いシートの決め手は素材ではなく設計である事を痛感した。
■ 結論めいた物 ■
はっきり言って生活の道具、仕事の足に使うの事を考えた時、リベロのような普通の車には及第点が付けられると思う。
増して信頼性や保守性の事を考えるとその差は絶望的に広がるともいえるかもしれない。
しかし、私は車を『単なる移動のための道具』とは割り切る事が出来ない。
撮影機材を運んだり、週末の買い物の為に自動車は必要なのだが、
車はこれで十分だ。
ではなく、
車はこれで十分だけど・・・
と、成ってしまうのだ。
今はただ、2cvが無事(安価)に戻ってくるのを祈っている・・・・
ダイハツESSE(以下エッセ)に試乗したのは平成18年1月8日の事。
発売自体は年末だったが、事実上は初売りでのお披露目と言えるかもしれない。
いつものようにポンコツ2cvで最寄のディーラーに向かったのだが、ここでは親父が一悶着起こしているので内心ビクビクしていた。(← だったら行くな!)
■ ファーストインプレッション■ ディーラーの駐車場に車を止めたところ、試乗車と思われ薄緑色のエッセが鎮座していた。
写真で何度も見ているので強いインパクト無いが、無機質なミラと比べるとユーモラス且つキュートな可愛さを感じるエクステリアデザインは個人的に二重丸だ。
決して未来的なデザインではないのだが、どこの車とも似ていない力作に思えた。
内装もなかなかセンスが良い。
今時の流行なのかインパネはオーディオも含んだ一体成型で固まり感がある。
無論これが気に食わなければレスオプションにして2DINオーディオをつける事もできるが、私はカーオーディオにお金を掛ける趣味はないので、適当な音質でラジオとCDが聞ければ十分だ。
否、ハッキリ言って最近のiPod旋風の前にはMDプレーヤーもCDもどうでも良いと感じている。
また、室内全体が私の大好きな明るいベージュである上に、インパネは別の色を乗せているのが良い。
ドアの内側の一部には外装色がそのまま使われているので、少なくとも3色の色が使われている勘定になる。
スポーティーとか何とか御託を並べた真っ黒で味気ない物とは雲泥の差だ。
個人的にエッセのデザインは大いに気に入った!
■ いろいろ触ってみると・・・■
しかし、どんなにデザインが気に入っても、ヤッパリ自動車は自動車である。
ドライポジションが出鱈目だったり、シートの出来が最低ならば乗る気にならない。
丁度営業さんが出てきたので恐る恐る乗り込んでみた。
すると、シートの出来は可も無く、不可も無くというレベル。
多分1年前まで乗っていたプレオと同等くらいで、軽自動車としては平均的なレベルだろう。
ラテンの高性能シートのように優しくストロークして包み込むわけではないが、座る者を拒否するようなガチガチシートではないのが『不可ではない』というコメントの趣旨だ。
まあ、文句を言いたいのはやまやまだが、安い軽自動車に全てを求めるのは大人気ない。
(まあ、長時間乗ったわけではないので詳細は分からないしね・・・・)
運転席の次に後部座席に乗ってみたのだが、こちらは『プラス2』位のものに感じられた。
座面が決定的に短いので太もも全体をシートが受け止めてくれない上に運転席よりも硬い材質が使われている印象を受けた。
しかもセンタートンネルが結構張り出しているため、閉めたドアを避けようと中央に体を寄せると足が多少邪魔になってしまうのが気になった。
センタートンネルがあるのはシャーシーの強度を持たせる為であると共に、4WDモデルのプロペラシャフト用であるのも重々承知している。
また、下手に床面を上げてヘッドルームが減るのも考え物だし、体育座りを強要されるのも嫌なものだ。
要するに大人が常に乗るのは辛いシートだが、合法的に4人が乗れるのだから2シーターよりも実用的と割り切るべきだろう。
さて、話の流れでエッセの試乗をする事になった。
乗ったのは最上位機種の『X』と言うモデルなのでATは4速だ。
前述の通り、買うとすれば4速ATモデルを選ぶ事になるので『X』はジャストミートとも言えるのだが、内心では3速ATを試してみたかった。
燃費の事を考えると3速ATより4速ATの方が良いのは分かりきっているからだが、逆説的に『ダイハツの3速ATはどれ程か』を確認したかったのだ。
(タントを買うときに三菱のekワゴンの3速ATに試乗したが、ジージーと煩かったし、近所を走る程度でも4速目にシフトアップ出来ないゆえの失速感を覚えたからだ)
■ いよいよ試乗 ■
走り出して感じたのは『違和感が無い』と言う事だ。
確かに2cvのようにしなやかなサスペンションではないし、CVTのように変速ショックがゼロということもない。
安価な車なので防音材も最低限しか使われていないし、音のチューニングがされている訳でもない。
サスペンションの動きも普通だし、ATの変速ショックも極普通。
パワステの操舵感覚も普通だし、エンジン音の聞こえ方も普通というもので、全てが想定の範囲内と言うか、許容の範囲内にあるのだ。
少なくとも軽トラックのようにドッシン、バッタンする諦めの境地には無く、十分に乗用車であると思う。
その理由も大凡分かっている。
エッセはフルスクラッチされた車ではあるが、実際には安価に作るためにエンジンとシャシー以外は使い慣れた既存のデバイスを使いまわしているはずだ。
その為、ディーラーの周りを10分くらい試乗する程度では初物にありがちな未成熟な部分は皆無なのだ。
それは長年の技術の積み上げとも言えるので、私は悪い事とは思わない。
結局のところ、特別な欠点を見つけられずに試乗から帰ってきた。
ひねくれた言い方かもしれないが、スズキ・スイフトと同じで物凄く悪くない車だと思った。
恐らく乗り換えてしまえば暫くの間は満足して乗っていられると思う。
まあ、奥方から釘を刺されていたので見積もりはして貰わなが、カタログをもらって帰宅した。
■ カタログを見て・・・ ■
エッセはスズキ・アルトの対抗馬として十分なポテンシャルを持っている車だと確認したものの、気になったのはラインナップの意義についてだった。
営業さんとの雑談の中でエッセのラインナップは事実上トランスミッションによる区分くらいで、アルミホイルの設定など特別なオプションは最初から無いというのだ。
しかし、そうなるとラインナップは3種類しか存在しないことになり、4種類ある事が理解できない。
そこで貰ってきたカタログの諸元表を眺めたところ、最高グレードの『X』から少しずついろいろな物を削る事でラインナップが出来ていることが分かってきた。
グレード名 | トランスミッション | UVカットガラス | リアヘッドレスト | CDステレオ | 価格(税込) |
---|---|---|---|---|---|
X | 4AT | ◎ | ○ | ○ | 924,000円 |
L | 3AT | ○(正面と前ドアのみ) | X | ○ | 829,500円 |
D | 3AT | △(フロントのみ) | X | ○ | 756,000円 |
ECO | 5MT | △(フロントのみ) | X | X | 682,500円 |
また、4つのグレードは配色により上下2つの階層に分けられるようだ。
グレード名 | インパネ配色 | シート配色 |
---|---|---|
X&L | ベージュ・2色 | ベージュ+ボディーカラーによって6種類 |
D&ECO | グレー・2色 | ベージュ+グレー |
グレードが下がると付いている物が少なくなると言うのはエッセに限った事ではないが、ヘッドレストやUVカットガラスの扱いを考えると『X』以下は二人乗り扱いっといった感がある。
■ 結論めいた物 ■
Webや試乗車で受けたエッセの印象は『安価』で『燃費が良く』、『可愛い』車と言う物だった。
しかし、カタログを読み込んでゆくうちに、騙しのテクニックを感じてしまったのが気になった。
『X』が最高車種に設定しているのは実に明確な事なのだが、同時に『ECOというグレードはカタログを飾る為だけに存在しているように感じられてならない』からだ。
これはテレビCMにもそのまま当てはまる。
有名女優を使ったCMを見た人が画面の左上隅に記載されている値段を見て
安くて可愛い~
と、思ってディーラーに行くが、カタログに載るECOの貧相な内装に幻滅してしまう。
その上にAT免許なので『XかL』を選びざるを得なくなると言う寸法だ。
ただ、この手法はどのメーカーでもやっているのでダイハツだけを攻めるつもりは無い。
しかし、それでも『X』相当でMTとATを選ぶ余地が無いのも気に入らないし、『ECO』に4WDの設定が無いのも良く分からない。
はたまた『DとECO』は野郎が割り切って商用車的に乗るのだから『UVカットガラスなどいらぬ』というのも理に適わない。
男だろうと女だろうと紫外線に当たり続ければ皮膚がんや白内障になるのだから全車全窓にUVカットガラスを採用してもバチは当たらないはずだ。
世の中にはうちの親父のように気の短い人間も多いだろうからマクドナルドのバリューセットのような物がある事自体は肯定する。
しかし、ラーメンでいうところの全部盛りである『X』から、ユーザーが部品を逐一選択する事の出来るシステムに無かったり、それに順ずる車種設定が無いのがストレスの根源だ。
何だかんだ書いたがエッセは良い車だと思う。
可愛い車は他にもあるが、現在の私の中ではエッセは飛びぬけて個性的に見えている。
少なくとも買い替え候補としてはスズキアルトよりも1歩か2歩リードしていると思う。
ダイハツESSE(エッセ)の事を知ったのはTVKの番組『クルマのツボ』で紹介されたのが切欠だった。
『東京モーターショー特集』の最後あたりで、MCの岡崎五郎氏が『注目している車の一台』として推していた車なのだ。
それにも拘らず、本編では取り上げられなかったのでネットで検索してみると、アウトラインだけは見えてきた。
ダイハツには量販車種であるミラがあるが、スズキアルトに対抗できるように一層価格設定の安価な軽自動車として作られたらしい。
要するにエッセは生まれながらの安車なのだが。
しかし、写真を見たら実にキュートで可愛い。
内装も外装色によって色を変えたりする配慮があり、商品として好感が持てそうなのだ。
それから1ヶ月くらいして一般紙にダイハツとしては久しぶりの完全新設計エンジンをエッセを最初に搭載すると報じていた。
実用燃費の向上と排気ガスのクリーン化などを盛り込んだ点なども含め、ダイハツのエッセに対する力の入れようが分かる。
時が過ぎ、12月末に販売が開始されると価格表なども出てきた。
一応ネットでチェックしたところ最廉価版は約70万円と思い切った価格設定をしているものの、5速MTのみなのが気になった。
それと同時に4速ATは最上位機種のみで、他は3速ATになってしまうのは実に安普請だ。
まあ、安価に作る為には安価な既存のデバイスを使うのは分からないでもないが、都会だって24時間渋滞しているわけではない。
夜にもなれば実質巡航速度は50km/h以上に成るわけだし、高速道路に乗る事を考えると3速ATでは燃費も悪いし煩くて仕方がないはずだ。
そんな事を考えつつも、やはり現物を見ない事には評価は出来ない。
折を見て試乗へ出かけたのだった。